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日記やら二次創作やら、つれづれと。
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お題

088 「言い訳とやらを聞いてやる」


ED後のキールとメルディのお話。
幸福の雪。

ドタバタ、ドタバタ、と、
夜中に騒々しい音がするのは、必ず隣の部屋から。
世界を巻き込んだネレイドの企みを潰し世界を守るため、セイファートリングを破壊し、インフェリアとセレスティアを分断する騒動からまだ日も浅い。
偶然か必然か、僕はセレスティアへ墜ち、今は頭脳面でセレスティア復興に力を注いでいる。シルエシカの協力の下、全面的に指揮を執り、アイメンを初めとした核街へ指示を出していた。
今も、明日はガレノスとその話をしようと紙面に向かっていたのだが。
「まったく……」
ため息をついて、僕は目線だけを横にずらした。
見えたのは白い壁。他には何もない。ポスターの類は好きじゃないし、そもそも僕は居候の身だ。
しかし、現時点での家主がああでは、いろいろ口出しするのも仕方がないといえるだろう。
立ち上がると、年季の入った椅子が軋む。構わずに足を進め、ノックをした。
「おい、メルディ。何をやっているんだ」
同時に声をかけると、面白いぐらい慌てた異国語が聞こえた。それから数秒もしないうちに、
「き、キール? 何か、あったか~?」
ドア越しに、明らかな言い淀みのある言葉が返ってきた。
「いいから、ここを開けろ」
おそらく、このままでは埒が明かない。もともと口下手なメルディは、現状を説明することが特に苦手だった。しかし、
「いきなり女の子の部屋に入ろうとするのは、デリカシーない男のすることよぅ」
「この間は勝手に連れて行ったじゃないか……」
「あの時は仕方なかったよぅ。キールが悪い!」
何が仕方なかったのか。確かあれは、僕が丸一日仕事に追われ、構ってやれなかったのをメルディがいじけた結果、機嫌を直すために夜通しウィスゲームを開催して僕は二日間徹夜になった……
思い出した瞬間、疲れも一緒に思い出したように僕はうなだれる。
しかし、ここ最近は違う。仕事をしながら、それなりにメルディにも構っていた。いじけて部屋に閉じこもっているというのなら、まったく思い当たるフシがない。
ともなれば、またメルディは突拍子もない遊びでも考え付いて遊び倒し、それを僕が叱りに来たと勘違いして……というところか。
「メルディ、僕は別にお前を叱りにきたわけじゃない。だが、前にも言っただろう。何か言いたいことがあるなら、ためらわずに言え。それもせずに塞ぎ込まれては、僕は謝ることすら出来ないだろう」
その、いつもの突拍子もないことをメルディがやらかす時は、必ずメルディは何かを悩んでいた。おそらく、それを解消するためにもがいている結果だろうが、それならばいっそのこと話してくれればいい。何故か、悩みの大半は僕のことなのだから。
「…………あのな、悩んでるわけじゃなくてな……」
ほんの少しの間を要して、メルディは話し始める。
「ちょっとびっくりして、わたわたしちゃっただけ」
「何に驚いたんだ?」
「失敗しちゃっただけよー」
「だから、何に失敗したんだ?」
遠まわしすぎる回答に埒が明かず、苛立ちが募っていく。いったいなんだというのか。
「だから、えっとな、んーと……」
「………もういい。開けるからな」
言って唐突にドアノブに手をかける。もちろん、鍵を持っているフリとして音を立てるだけだ。少しぐらい脅かさないと、こいつは開けようとしないだろう。お人好しの頑固者が、そう簡単に言うことを聞かないことはわかっている。
そのはずだったが、
「ん?」
勢いよくドアノブが回る。
「うわわっ」
その反動で体が前のめりになり、視界には散らかったメルディの部屋があった。
呆然とした僕に、
「バイバ! いきなり女の子の部屋が入ってくるなんて、関心しないよー! お母さんもびっくりだな」
「誰がお母さんなんだ……ってその前に、メルディ! お前、鍵をかけてなかったのか!?」
内心、心臓がひっくり返りそうだった。まさか、隣に僕がいるのに鍵もかけずにいたのか、こいつは。
「メルディの部屋鍵ついてないよ。代わりに、メルディの部屋に入ろうとする人みんなシゼルが追い払ってくれたよー。ご安心! でも、もう二度と来ない言われて友達減ったよ。悲しい思い出」
「今度僕がつける……」
……この家に住むようになってから、親子のエピソードをよく聞くようになったのだが、どうにもシゼルは親バカだったらしい。この瞬間にシゼルがいたのなら、僕はすでに晶術の餌食になっていたのだろう。
メルディがどうなのかは知らないが、僕にとっては死活問題に等しい。なんともいえない恐ろしさと恥ずかしさにおそわれて、あわてて話をそらした。
「そ、それで、結局何をしていたんだ?」
「あっ、見ちゃダメー! 秘密にしてたのにー! キールが甲斐性なしー!」
「誰が甲斐性なしだ!」
反論することは忘れず、しかし部屋をざっと見回してみた。
「……。………?」
もう一度見回してみる。
「………………?」
もう一度。
「…………………………………メルディ」
「なんだよー、青虫さんー」
「誰が青虫だ」
かなりの不服モードに入っているメルディの暴言はさておき、僕は頭をかいた。
「結局、お前は何をやっていたんだ?」
実際は、部屋に入ればメルディが何をやっていたかぐらい見当がつくと思っていた。しかし……
「? 見てわからないかー?」
「散らかすところまで散らかした部屋作りか?」
「違うよー! 何言うか!」
ほとんどがゴミで埋まった部屋の中心から、慎重に踏み越えて僕の傍に来るメルディ。それを見て、ようやく気づく。
「……? この紙切れ、ゴミじゃないのか?」
ゴミだと思った紙切れの山。それをメルディは踏まないようにしていた。手に取ると、紙切れではなく、いびつだが丸く立体型に作られている。
「キールは幸福の雪知らないかー?」
「幸福の雪?」
「セレスティアの寒い朝に時々見られるよ。恋人同士で見ると幸せになれる言い伝え」
言い伝えはさておき。今まで知らなかったこと現象のようだが、これはこれで面白いことを聞いた。
原因はセレスティアの晶霊セルシウスと、加えて……
「あ、キール! そんな難しいこと考えてても読者が困るよ。何より作者が困るな」
「お前はいったい誰のことを言ってるんだ……?」
僕の自動分析思考能力(ガレノス命名)をとめたメルディは、微笑みながら言う。
「ホントはキールに内緒で作ろうと思ってたよ。キール驚いたら、難しいことも吹っ飛んじゃうな」
……この散らかりの理由は、僕のためだったらしい。
ふと見つけた、潰れてしまっている紙を手に取った。
「……ほ、本当に馬鹿だな、お前は」
呆けたように僕を見つめるメルディに、かまわず僕は話を進めた。
顔が赤いのは、自分でもわかっていた。
「いいか。こういうのはまず……」
それからメルディは、嬉しそうに僕の話を聞いていた。
その夜は、二人とも徹夜になった。眠気などなかったのは、生産性などなくても充実していると思えたからなんだろう。






実際、出来上がったのは夜明けよりもほんの少し早い時間だった。
百は軽く越えるのではないかと思えるほどの、紙の山。いや、メルディが言ったように、雪というほうが正しいのだろうか。
なんにしても、
「それで、これをどうするつもりなんだ?」
これで雪は出来た。後はこれを使って、どう幸福の雪を表現するか、だ。
籠に詰め込んだ雪を置く。
場所は屋上。出来上がった雪は全て持ってきている。
「全部回りに撒いてほしいよ。後はメルディにおまかせな!」
「わかった」
どうやらきちんと考えがあるようだ。安心して、僕は言われた通り、屋上の 至るところに雪をばら撒いていく。二人ともがやり終えると、中心にたたずんだ。
周りは白一色。本当の雪が降ったような光景に、しばし見入ってしまう。ふと隣を見ると、メルディが嬉しそうに微笑んでいた。
……突然心の中で、似合う、などと、
「それじゃキール、見ててな!」
「あ、ああ」
メルディの声で我に返る。危なく声がひっくり返るところだった。
夜明け前の静かな夜に、ほのかな光が集まっていく。
幻想的だった。
瞳を閉じたメルディは呟く。

「…………シューティングスター」

ほのかだった光が、まぶしいほどに輝いた。
「な……!」
解説するなら、シューティングスターという晶術は大晶霊ゼクンドゥスとマクスウェルの力を源とする、攻撃晶術である。
もちろん、そんなものを紙に使ってしまえば、粉々に……
しかし、
けたたましい音とは対照的に、雪は破れ散らなかった。光を打ち鳴らしながらゆっくりと浮き上がっていく。
これには目を見張った。晶術を、制御どころかアレンジまでしたメルディ。こんな使い方もあるのか、と感心する。
だが、どうやらこれで終わらないらしい。メルディは新たに術を唱えていた。
今度はどうするのか、期待が高まる。
そして、雪は、

「イフリート!」

燃え上がった。
しかしそれも一瞬の出来事。燃え上がった紙は一瞬にして塵となり、消えていった。

『……………………………』

もちろん、僕には予想外の出来事。
どうやら、メルディも予想外だったようで、
「……き、消えちゃったな。あはは~」
ごまかし笑いを浮かべるメルディに、少しでも期待した自分は愚かだったのだろう。
あの苦労はなんだったのか、と言いたくもなる。血が上った頭で、口を開こうとした時、

「でも、綺麗だったな! キール!」

満面の笑みで、メルディは言う。
……よくよく考えてみれば、メルディは曲がりなりにも晶霊術師。イフリートを召喚すればどうなるかなどわかっているはずである。そもそも、メルディがあの方法で幸福の雪を作るなどという発想を思いつくだろうか?

「……言い訳とやらを聞いてやる」

冷静になった僕は、嫌な予感がありながらもそう言った。
メルディはまた嬉しそうに笑う。
僕がメルディの話を聞いた後に、もう一度、今度は僕の考えで幸福の雪を作ることをわかったからなのだろう。
まあその後、バンエルティア得意の秘密兵器のおかげで通信可能となった幼馴染二人が、僕に開口一番から説教をされるハメになったのは、自業自得だ。






終。

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一ノ瀬未来。群青。軍事用。どれでも可です。
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自己紹介:
最近いつもに増してぐだぐだになってまいりました。gdgdって略はけっこう好きだがwktkはいかんとか思ってしまう。
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