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日記やら二次創作やら、つれづれと。
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(BLEACH連載 delete)

厄介なことになりましたね。
確かに、黒崎サンには必要な戦いでした。
でも、
キミが来る必要はないんですよ。
お願いだから、大人しくしててくださいね……
夏樹……
 
 
 
(浦原喜助)



弐、
 
 
ガラリ、とドアを開けて入ってきたのは、
 
 
 
 
 
 
「……ん?」
不意に、空を仰ぐ。
顔ごと向けると、視界には昨日と同じ青が広がるばかり。
違うのは、快晴ではなく雲がところどころ見えるところ。今は朝であること。
最後に、あたしが立っているこの場所。
あたしは隣町の空座町、空座高校の前にいる。
昨日の今日だったので色々と準備不足の面もあったが、なんとか転校することができたのだ。教師も半ば無理矢理納得させた。友人の南波には何も言えずじまいになってしまったが、それも仕方ない。
夜一に抜け駆けされるわけにはいかない。
……のだが。
見上げた先の空には、昨日のような違和感。
しかし、今日のは昨日と何かが違う。
言葉にするのも、感覚でとらえるのも難しい。
「中途半端だよ……たくもう」
もどかしい気持ちを、頭に浮かんだゲタ帽子にぶつけながら、
 
「道を通してくれないか?」
 
声をかけられた。
振り向けば、眼鏡の男の子。
鋭い眼光と、几帳面なほどきっちり着こなす学生服。
不似合いなのは、右腕から手にかけて巻かれた包帯だろう。
……そして、また違和感。
「………人の話を聞いているのか?」
「っと、ごめんなさい」
やや憮然としながら眼鏡を直す男の子。
道を譲ると、男の子はさっさと行ってしまおうとしてしまった。
「待ーって待って!」
慌ててひきとめるあたし。両の手のひらを向けて、止まれ、の意だ。
「……何か?」
明らかに嫌そうな顔をして、それでも話を聞いてくれる男の子。……体半分しかこちらには向いていないけど。
「今日この学校に転校してきたんだけど、職員室の場所とか……教えてくれないかな?」
苦笑しながら言うあたし。思わず手を合わせる。見知らぬ学校で迷子になるのは不安すぎる。
何せ、実はすでに遅刻スレスレの時間だったりするのだ。
男の子は少し驚いたかと思うと、またすぐに目を細めた。
くるり、と後ろを振り向き、廊下を指さす。
「そこの廊下の先の階段を上ればある。それじゃ」
その言葉を最後に、少年は今度こそ行ってしまった。
あまりの呆気なさに、あたしは数秒止まり、
「……あ、お礼言うの忘れた」
呟いた。
 
 
 
 
 
 
「階段から落ちました。」
なんて、ベタすぎる言い訳を使う人間が、この世にもまだいたりする。
名前は石田雨竜。
昨日俺に、堂々と喧嘩売ってきた男だ。
「へー。ま、いいや。席ついて、授業始めるから」
現国教員越智の適当すぎる答えを聞いて、石田は自分の席につく。片腕しか使えない割には、動作はいつも通りなところが憎らしい。
「あまり気に病むな」
いきなりの声に、びくり、と体が反応する。
「貴様のせいではない。奴の自業自得でついた傷だ」
声の主は―――朽木ルキア。腕を組み、至極偉そうな態度だ。
「べっ……別に! あんなモン、心配するほどのケガじゃねーよ!」
慌てて返す言葉に、
「ほう。誰が心配してると言った? 私は気に病むな、と言ったのだぞ」
ルキアは思い切り揚げ足を取る。
「…てめえ……」
ドスのきいた俺の声にも、ルキアはブキミにふふふ……と笑っていたが。
そんなルキアとの会話にも慣れたもんだ、と俺は思う。
こう見えても、ルキアは人間じゃない。
 
死神だ。
 
俺たちが今住んでる世界―――現世には、"整"と"虚"という魂魄が存在しており、要するに"整"が良いユーレイで"虚"が悪いユーレイだ。
死神はその二つの霊を魂葬させる役目を担っているらしい。
その死神、朽木ルキアが俺の前に現れたのは数ヶ月前。"虚"に襲われていた俺たち家族を守るため、刀を抜いた。が、ルキアは俺を庇い重傷を負う。
助かる術としてルキアが提案したのは、俺が死神になることだった。
 
その日から、俺は死神代行になった。
 
ルキアは義骸という肉体に入り、霊力が回復するのを待つらしい。
その間は、俺は魂葬を引き受けることになった。
それまでは危ないながらもなんとかやってきた俺だが、昨日はさすがにハードだった。
自らを滅却師と名乗る石田。大量の虚。
それもなんとか一段落させて、こうして学校に来ているわけだが。
……などと思い耽っていると、
 
ガラッ!
 
「すいまっせーん」
変な女が、教室に入ってきた。
 
 
 
 
 
 
教科書を持って、一護をからかって、
そんな日々が、もうすぐ終わる。
先日の石田との騒ぎで、間違いなく尸魂界に私の存在が知れた。人間への死神能力の譲渡は重罪。今日か明日か、近いうちに必ず尸魂界からの追っ手が来るだろう。
その前に、私は一護から姿を消す。
尸魂界に一護の居場所がバレれば、どうなるかわからない。絶対に、巻き込んではならない。
先ほど、それについての手紙を書いた。後はこれを一護の机の前に置いて、私が姿を消せば―――
 
「すいまっせーん」
 
そんな決意は、いきなり中断させられる。
顔を上げれば、教室内は静まり返っていた。
皆が驚き、呆然としている。何せ、唐突に教室に入ってきたという女は、見覚えがない。ざわめきを取り戻した周囲の皆も、彼女が何者なのかを議論している。かくいう私も心当たりがない。……人の影で見えないということも大きいだろうが。
「……おい、なんなんだ?」
教師と話し始めた彼女を横目で見ながら、一護に話しかける。
「よくわかんねーけど、転校生とかじゃねーのか? 思っきし遅刻だけどよ」
「転校生……」
教師との話がいまだに続いているところを見れば、納得できる。騒ぐことでもない、とすぐに視線を落とした。
考えなければならないことが、山積みだ。余計なことに時間を費やしている暇はない。……はずなのに。
「あれ? あの……」
すぐ間近で、声がする。
いつの間に移動したのか、転校生が私の目の前にいた。
気配を感じなかった行動に、目を見開く。慌てて立ち上がり、警戒心を露わにしたところで、
私の動きは止まった。
 
……蒼い、髪?
 
……そんなはずはない。
そんなはずは。
私の想いは、なんとしてでも否定しようとした私の想いは、
「……ルキア?」
彼女の一言で、打ち砕かれる。
「……………夏樹……!」
このやり取りに、その場はさらに騒然となった。
 
 
 
 
 
 
嘘だと思いたかった。
否定しようのない事実を前に。
ルキアだった。
ルキアに、会ってしまった。
 
 
 
 
 
 
オレは今日も店の前の掃除をやらされてるが、こんなことを真面目にやっていられるわけがない!
「ジン太くん、ちゃんとおそうじしてよう……」
「うるせえ! 今の時代、男は黙ってサッカーなんだよ! シュートぁ!」
口うるさいウルルを一喝し、ほうきを振り回す。
通り道にもならない店の前は、遊ぶスペースが十二分にあった。
体全体を使ってほうきを一閃。華麗に土埃が舞い上がる。迷わずポーズをとるオレは、かっこいい!
「もう……ん?」
まったく美学を理解できていないウルルが、変な声を出す。
ウルルの前には、一匹の黒ネコがいた。
「にゃんこ……」
ネコの存在を店長に知らせると、恐ろしく親しげに連れて行ってしまった。……ネコは相当嫌がっていたように見えたが。その気持ちはわかる。
しかし、あの店長がネコ相手にあんなにも友好的に接するとは。
「何だ? あのネコ、一体……」
驚きを隠せないオレに、答えたのは大男テッサイだった。
「夜一さんといいましてな。店長の無二の親友なのですよ」
ガタイのいい見た目とは違い、穏やかな口調のテッサイ。嘘をついた姿は見たことがない男が言うということは。
「へー……無二の親友がネコかぁ……なんつーか……ウチらの店長って……気の毒。」
オレの正直な感想に、
「まぁ……そういう見方も出来ますな」
テッサイは遠巻きに一人と一匹の姿を見て言った。
 
 
 
 
 
 
二時間目開始のチャイムが鳴る。
それを聞くのは、裏庭の木の上。あたしは今、本来いるべき校舎から隠れるように、太い幹を椅子にして、木の葉に囲まれていた。
要は、サボりだ。転校生が初日からやることではないが、これ以上待つことはできなかった。
…お互いに。
「……久しぶりだね、ルキア」
あたしは努めて自然に笑う。
ここにいるのは、ルキアとあたしの二人だけ。
……今はまだ、ルキアに会いたくなかったけれど。
 
「どういうことなんだ?」
 
当たり前で、
「なぜ……なぜっ!」
怒りも悲しみも当たり前で。
「なぜここに…夏樹がいるんだっ……………お前は………!」
言葉は続かず、顔を伏せてしまうルキア。
握りしめた手のひらに、手を伸ばすことはできなくて。
 
「ごめん……」
 
さわさわと、木の葉が鳴る。
小さくなってしまった声は、ルキアに届いただろうか。
そんな自分の弱さをしまいこんで。今はもっと大切なことがある。
「……ルキア。あたしもルキアに聞きたいことがあるの」
びくり、と体を震わせたのが、わかる。
「どうして、義骸に?」
声色を真剣なものに変え、ルキアの目を見据える。
これは、それほどのことだ。
「……一時的に、死神の力を失った。……ある者に、……譲り渡したのだ」
ルキアは歯切れ悪く答える。表情は険しい。
その言葉に、あたしは確信した。
 
「それは、オレンジ頭の子?」
 
「!」
ルキアが目を見開く。どうやら間違いないようだ。
最初は、霊感が強すぎるだけだと思っていた。しかし、それにしては霊質が鋭すぎる。追えば追うほど、彼の霊圧は普通の人間とは異なっていた。
 
あれは、死神の力だ。
 
おそらく、彼が虚を相手にしたことも一度や二度ではないのだろう。
「ルキア。それは……」
「わかっている」
あたしの言葉を遮って、ルキアは言う。
重罪。この二文字が、ルキアの身に降りかかっている。
けれど、問題はそこではなく。
「……尸魂界には?」
……やむを得ない状況とは、あると思う。
人命救助を優先した結果最善の方法で状況を打破し、その障害で通信がとれず、その間に全て解決した。それならば、と考えるのは当然。必然である。
何より、尸魂界のやり方ならば、あのオレンジの子さえ危うい。
……ただ気になるのは、ルキアは焦っているということ。
「先日、大虚の襲撃があった。撃退したのは一護だ」
「……!」
死神の力の譲渡といえど、それは受け手の資質に大きく左右される。ましてや今まで実感したことのない力を扱うのは、容易いことではない。そんなつけ焼き刃の力で大虚を撃退したというのは、にわかには信じられない話。
だが、思い出すのは昨日の違和感。大虚の力を上回るほどのものなら、今のあたしに感じ取れてもおかしくはない。
「それは間違いなく、私の存在とともに尸魂界に伝わったはずだ」
「……つまり」
「追っ手が来る。私はしばらく、姿を消す……一護にも、手紙を書いた。これを置いて、私は去るつもりだ」
す、と差し出されたのは封筒とメッセージカード。
一護とはおそらくオレンジの彼のこと。
……これがルキアの焦る理由なんだ。
メッセージカードはたたんでもいなく、ルキアの手の中にあっても見ることができてしまった。
つい、反射的に中身を読むと……
やたら『た』の多い意味不明な単語の羅列が。
 
「………………………………………………」
 
「……あ、いや、これはその……げ、現世にこういうトンチがあってだな!」
慌てて手紙を隠すルキアに、あたしは思わず吹き出していた。
「………っふふふ……」
「なっ……こら、夏樹! 笑うな!」
顔を真っ赤にして言うルキアと、笑いをこらえられないあたし。
……緊張していた空気が、霧散していく。
安心してしまったのだ。
ルキアは変わらずにいてくれたことに。
表情が、あっという間にほころんでしまった。
大丈夫、と。
「じゃあ」
言いながら、両腕を上げて伸びをする。
「ちょっとは役に立てるかな」
「夏樹?」
怪訝そうに顔をしかめるルキアに、苦笑するあたし。
「正直自信はないけど、手伝うよ」
尸魂界からどんな死神が来るかはわからないけれど、やり方次第で切り抜けられるはず。今のあたしでも、サポートならできるはずだ。
「ば……馬鹿を言うな!」
「馬鹿とは失礼な。」
血相を変えて立ち上がるルキアに、ジト目で返す。
「無理も無茶もしない。危なくなったら即逃げる」
ね、と続けるが、ルキアの目は三角のままだ。
かまわず、満面の笑みを浮かべるあたし。
火花を散らす視線。数十秒。
…折れたのは、ルキアだった。
ため息をつき、座り直す。
木が揺れ、不意に葉の間から空がのぞいた。
そして、まったくの不意打ちだった。
「本当に……久しぶりだな、夏樹」
空よりも木の葉よりも近くにある微笑みに、衝撃を受けた。
先までの剣幕はなく、もうないものだと思っていた友達の挨拶をくれた。穏やかに、笑って。
あたしは、泣きそうな笑顔を浮かべた。
それだけを、許した。
 
 
 
 
 
 
「奴らが、来ておるぞ」
そう儂が言えば、喜助は帽子に隠れた目を覗かせた。
「…その話、ミルクの前と後、どっちにします?」
相変わらずの態度に、ため息をつく。
この閑散とした店の雰囲気に似合うほど、和やかな内容ではないというのに。
「夏樹も来ておる」
「みたいっスね」
「あいつめ……命令と言った儂に、思い切り笑っておったわ」
盛大にため息をつく儂と、笑う喜助。
「そりゃあ、夏樹らしいっスね」
喜助はまるで、娘の悪戯を呆気なく許す父親のように笑っていた。
それまで幾度も見た夏樹の笑顔。あれは、想いを曲げる気など一切ないと象った、宣誓だ。
だが、儂もそんな夏樹を怒っているわけではない。
それが夏樹だと理解していたし、そうなるであろうことも予測済みだった。
だが、しかし……
「無理しないと、いいんスけどね」
呟いた喜助。
言ったのは喜助のはずなのに、二人で同時にため息をついた。
それこそ無理な話だ、と。
 
 
 
 
 
 
空座本町駅で、待ち合わせ。
無論、私はそこにはいない。
向かったのは、逆方向だ。
夏樹はあの後、私について行くと言った。
嬉しかった。
また夏樹に会えたのが。
そう言ってくれたのが。
けれど、
一緒に行くことは、出来ない。
これ以上、誰かに迷惑はかけられないのだ。
それが夏樹なら尚更。
夏樹は尸魂界と決別した。尸魂界と関わらない方が良いのだ。
故に、私は一人走る。
最後に一度だけ、後ろを振り返ってから。
 
 
 
 
 
 
「……よし」
ラフな格好に着替え、相応の道具を持ち、足を踏み出す。
ルキアと別れた後から、すでに気合は十分なほどだった。
後は……
「どこへ行くつもりスか、夏樹?」
誰にも見付からないように出て行く、のは無理だったようだ。
いつの間に店の方に出て来たのか、あたしの後ろには喜助がいる。夜一がいないことにまだ救われるところだが、見透かされていることは間違いない。
視線をそらさずに、ポケットからはみ出ている物を手で隠す。
確かに、止められるとは思っていたが……
帽子から覗く瞳は、殺気と大差ないほどの圧をはらんでいる。手には愛剣さえも。
そして、それを脅しと踏んだあたしでも、軽口ではぐらかせるようなものではなかった。
 
「ルキアに会いに行く」
 
言葉にするのは、これだけで良かった。
少なくとも、あたしにとっては。
「……夏樹」
諭すように、喜助が口を開く。
「キミが行っても、何も出来ませんよ。それに、向こうにキミの存在を知られるわけにはいきません」
相応な事実だった。
それを逃げ口上なしに、斬って捨てる。
「それでも、あたしは行く」
それ以上は余計だった。
「いいんスか?」
喜助。
口に出さず、名を呼ぶ。
これ以上、
 
「あの人に、知られても」
 
……喋るな。
 
 
 
『夏樹』
 
 
 
っギィン!
 
「……ほら」
殺す気でかかったはずの小刀は、あっさり受け止められていて、
「そんな力で、どうするつもりスか? キミは今、元来の99%の力を遮断されているのに。それを頼んだのは、キミっスよ」
「……!」
淡々と投げかけられた言葉。
その趣旨を奥歯で噛み締め、小刀を落とす。
そして、
 
 めぎゃっ!
 
「ゲフっ!」
回し蹴りが喜助に炸裂!
脇腹を抱える喜助を、蹴り上げた脚はそのままに見下ろす。
こめかみがひきつっていた。
「喜助の阿呆……約束が違うじゃない……? 100%遮断してって言ったのに変な違和感はあるしこの悪徳商人ヤーさーん……!」
「ちょちょちょちょっ夏樹!」
「問答無用」
 
スパン!
 
と、いい音を立てて足払いをかけると、
「あイタっ!」
喜助は無様にすっ転んだ。
この好機を逃さずに、身を翻す。脇目を振らず、浦原商店から飛び出した。
早速拝借した道具を忘れたことに気付いたが、やむを得ない。
向かうは、駅。
そこで、ルキアが待ってる。
 
問題は、駅がどこにあるのか。
あくまでそれを唯一と、謳って。
 
 
 
 
 
 
 
 
続。

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HN:
一ノ瀬未来。群青。軍事用。どれでも可です。
性別:
非公開
趣味:
おっとっとを食べる。
自己紹介:
最近いつもに増してぐだぐだになってまいりました。gdgdって略はけっこう好きだがwktkはいかんとか思ってしまう。
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